ネコでの初の感染事例:ベルギー

ベルギーで世界初のネコでの感染事例が、2020年3月27日に報告されました。

ベルギーのペットとして飼育されているネコが、世界中に蔓延している新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」に感染したと、政府のFPS Public Health, Food Chain Safety and Environmentが3月27日に報道されました。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の人から猫への感染は初めてになります。ウイルス学者であり、ベルギーのコロナウイルス流行のための連邦政府のスポークスマンであるスティーブン・ヴァン・グート博士による発表は以下の通りです。「飼い主がCOVID-19で病気になってから約1週間後、北イタリアへの旅行から戻ってきたそのネコは、コロナウイルスの症状を発症しました。それは下痢や嘔吐、呼吸器の障害です」

所有者は、リエージュの獣医学部のダニエル・デスメヒト博士の研究室に嘔吐物と糞のサンプルを送りました。PCR検査の結果、これらのサンプルにはSARS-CoV-2の遺伝子断片が高レベルで検出されました。その感染したネコは9日後に回復しました。

ネコとヒトは呼吸器細胞の表面に類似したウイルス受容体を持っているようです。それに結合することで、 SARS-CoV-2 ウイルスは細胞内部に入ることができます。

ヒトでは、SARS-CoV-2 ウイルスが呼吸器細胞の外側にある ACE2 と呼ばれる受容体タンパク質に付着し、侵入することが報告されています。呼吸器の細胞内に入ると、ウイルスは特定の増殖システムをハイジャックして、多くのウイルスを複製することができるようになります。

「ネコのACE2タンパク質はヒトのACE2ホモログに似ており、これはおそらくSARS-CoV-2が細胞内に侵入するために使用している細胞内受容体であると思われる。2003年のSARS発生時には、猫もコロナウイルスに感染していた」とスティーブン・ヴァン・グート博士は述べました。

所有者がCOVID19に感染し、そのペットからコロナウイルスが検出された例は、香港での犬2例がありました。最初の犬、17 歳のポメラニアンは、2 月末にウイルスの弱い陽性を示しました。この犬は3月中旬に死亡しましたが、飼い主が病理検査を許可しなかったため、正確な死因は不明です。2 番目の犬、ジャーマンシェパードでも陽性反応が得られましたが、病気の症状を示していませんでした。

別のコロナウイルスが原因となった、重度の急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大時においても、イヌとネコはSARSの原因ウイルスは低レベルの感受性(感染性)しかありませんでした。そのことからも、今回のCOVID19に関しても、イヌやネコは低感受性であろうといわれています。

現在まで、ペットからヒトにウイルスを感染させたという報告はありません。またヒトからペットへの感染であっても、ウイルスの拡散の重要な経路ではないだろうと推察されています。猫がCOVID19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に感染していたことを決定的に証明するためには、このウイルスに特異的な抗体を検出する必要があります。


麻布大学 ヒトと動物の共生科学センター Center for Human and Animal Symbiosis Science

麻布大学では、文部科学省私立大学ブランディング事業にて「動物共生科学の創生による、ヒト健康社会の実現」(平成29年度ー32年度)が採択され、多くの成果を得、また高く評価されてきました。本研究センターはその後継として、麻布大学生物科学総合研究所に設置されたものです。これまでの高い研究力や多くの知見をさらに発展させ、ヒトと動物の共生を進め、両者の互恵的健康支援を進めてまいります。