サルでは、SARS-CoV2への感染により生じた免疫は次の感染への抵抗を高める

ワクチンの有効性を霊長類で初めて示しました。


SARS-CoV-2に対する防御免疫を理解することは、世界的なCOVID-19パンデミックの終息に向けたワクチンおよび公衆衛生戦略にとって重要です。しかし、まずSARS-CoV-2に感染すると再感染に対する防御免疫が得られるかどうかが重要な点となります。アカゲザルを用いたSARS-CoV-2感染モデルでは、上気道および下気道における高ウイルスの検出に加え、体液性および細胞性免疫反応、ウイルス性肺炎の病理学的な結果が得られています。このアカゲザルが感染から回復し、再度SARS-CoV-2に暴露させたところ、気管支や肺胞、鼻粘膜から採取したウイルスの力価が一次感染と比較して著しく減少しました。再感染実験後の免疫反応は、アカゲザルが抗体を形成し、それによって保護が媒介されていることを示唆しています。これらのデータは、非ヒト霊長類において、SARS-CoV-2感染が再曝露に対する保護免疫を誘導すると、いえるでしょう。

この実験結果のあと、同じ研究グループはサルに4種類のDNAワクチンを試しました。これらは、スパイク蛋白質と呼ばれるウイルスの一部を作るための遺伝子を含んだ化合物で、筋肉に注射することで、そのスパイクを産生するように設計されたものです。その結果、35匹のサルにワクチンを接種したところ、ウイルスに対してある程度の耐性が得られたことがわかりました。

今後の課題は、何十億人もの人々のためのワクチンを見つけるために、正しい免疫反応がどのようなものであるか、生成される必要がある抗体の種類や量、さらには抗体がどの程度の時間維持されるか、などについて、もっと詳し情報が必要となるでしょう。

麻布大学 ヒトと動物の共生科学センター Center for Human and Animal Symbiosis Science

麻布大学では、文部科学省私立大学ブランディング事業にて「動物共生科学の創生による、ヒト健康社会の実現」(平成29年度ー32年度)が採択され、多くの成果を得、また高く評価されてきました。本研究センターはその後継として、麻布大学生物科学総合研究所に設置されたものです。これまでの高い研究力や多くの知見をさらに発展させ、ヒトと動物の共生を進め、両者の互恵的健康支援を進めてまいります。