SARS-CoV2、ミンクからヒトへの感染??

オランダの少なくとも5つのミンク農場でCOVID-19が発生している中、ロイターの記事によると、オランダのカローラ・シューテン農相は、農場の労働者がミンクからSARS-CoV-2に感染したことを示す書簡を議会に出したという。これは、ミンクから人への感染の可能性をシてきた最初の報告になります。しかし、これがどのように判断されたのかは明らかではなく、本当にミンクから人への感染であったかのか、もっと詳細な情報が必要な状況です。

生物学的見地から見れば、ミンクからヒトへの感染は驚くべきことではありません。ミンクが他のミンクに感染することができれば、密接に接触している人にもウイルスを広げることができでしょう。ミンクはフェレットに近い動物からも想定できます(フェレットはコロナウイルスに感染し、それを他のフェレットに媒介することがすでに報告)。しかし、人から人への感染が広範囲に及んでいる現状で、動物から人への感染を特定することは、特に無症状の感染者が他の人に感染する可能性があることからも、非常に困難です。

ウイルスの遺伝子配列による解析は、時間の経過とともにウイルスに微妙な変化が起こるため、誰が誰と誰との関連性があるのかを明らかにするのに役立ちます。 しかし、ヒト同士で同一のウイルスが見つかったとしても、ウイルスがどの方向に感染したのかはわからないし、両方の個体が同じ感染源に感染した可能性も排除できません。オランダの報告書は、ミンクと労働者のウイルスの遺伝子配列に類似性があることを示していますが、これだけでミンクからヒトへの感染とは言えないのです。感染した労働者と他の労働者との接触、労働者とミンクとの接触、接触と病気の時期、その地域の農場外の人から見つかった株の遺伝的配列などについてのより多くの情報が、状況をよりよく理解するために必要です。

動物からヒトへの感染の実例としてはまだ情報がたりない、と思ってください。

麻布大学 ヒトと動物の共生科学センター Center for Human and Animal Symbiosis Science

麻布大学では、文部科学省私立大学ブランディング事業にて「動物共生科学の創生による、ヒト健康社会の実現」(平成29年度ー32年度)が採択され、多くの成果を得、また高く評価されてきました。本研究センターはその後継として、麻布大学生物科学総合研究所に設置されたものです。これまでの高い研究力や多くの知見をさらに発展させ、ヒトと動物の共生を進め、両者の互恵的健康支援を進めてまいります。